星/THE STAR

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「星」のカードでは、裸の女性が両手に持った瓶から水を流しています。ひとつは池に、ひとつは地に。空には大きな星と、それを取り囲むように7つの星が輝いています。「星」のカードは、古くから「希望」の意味を持たされてきました。輝く星と「希望」は、人々にとって、結びつけやすかったのでしょう。『星に願いを』という有名な歌もありますし、大変受け入れやすい意味付けだったのだろうと思います。

7つの星に注目してみましょう。7という数字は、「完全」や「統合」そして「大宇宙」を象徴します。7つの星は、占星術上の7つの惑星、すなわち太陽、月、水星、金星、火星、木星、土星を表していると考えられています。そしてまた、7という数字は、あらゆる7つの項目を擁した重要な数字でもあります。キリスト教に「七徳」というものがあります。「七つの大罪」の対極にある概念です。「七徳」は「三つの対神徳」である「信仰」「希望」「聖愛」と「四つの枢要徳」である「賢明」「正義」「剛毅」「節制」を合わせて「七徳」としています。このうちの「希望」がカードの意味として採用されたと考えられます。




「正義」「剛毅」「節制」は、タロットカードの大アルカナにそのタイトルを持ちますが、「星」のカードには、それらがユニットとして組み込まれているようです。ひざまずく女性は、そうした徳目に照らされた「穢れのない美しい人物」の象徴と考えるのが自然でしょう。

瓶から水を流しているのは、何を象徴する行為なのか、それについては、多くの議論を呼ぶところであり、はっきりとした答えは出されておりません。「星」のカードが何を象徴しているのか、様々な意見があるようです。単純に「希望」という意味だけで解釈するには、深い示唆を含んだ絵柄であると言えます。

ここから先は、多分に私の個人的な解釈を盛り込んで解説させていただきます。一般的な解釈とは異なっていることもありますし、既出のタロット解説書には書かれていない事と思います。

「星」のカードでは、女性の背後に木があり、鳥がとまっています。鳥は「時を告げる者」「季節を告げる者」です。7つの惑星もまた「季節」や「時」を教えてくれます。「星」のカードは「時間」や「季節」そして「タイミング」と関連があると考える事が出来ます。「時間」を告げる惑星の代表は、金星です。金星は日の出前に「明けの明星」として、日の入り後に「宵の明星」として、明るく輝く星です。そして金星は、愛と美の女神ヴィーナスの星でもあります。これらをふまえて、改めてカードを見てみましょう。




女性の行為は、「禊(みそぎ)」をしているようにも見えます。神的なものとつながるための「儀式」ともいえる行為かもしれません。それは宗教的でもあり、俗世における「おまじない」のようでもあります。そして水辺にひざまづく姿からは、化粧をする女性のイメージも想起されます。きれいになる「化粧」は、女性にとっては「おまじない」のような要素があります。「金星」「ヴィーナス」「化粧」は容易に結びつきそうです。

ヨーロッパの古い風習には、復活祭の夜の夜露で顔を洗うと美しくなる、一年中病気にかからない、眼病に効くということから、復活祭の夜明け前に裸で草地に行き、露のなかをころげまわるというものがあったそうです。復活祭の夜の水は神聖であり、祝福の力に満ちていると信じられていました。ちなみに復活祭というのは、春分後の満月の次の日曜日です。

こうした歴史的な背景も考え合わせると「星」のカードには「夜明け前」「季節の訪れ」「美容」「化粧」「浄化」「薬」などの意味もこめられているように思えてきます。昔は、薬といえばハーブ(薬草)でした。ハーブを摘み取る作業もまた、星の運行を見て夜明け前に行うものでした。現在でも「バイオダイナミック農法」をされている方々は、惑星の運行を見ながら種をまいたり、農作業をされているようです。

「すべてのことには時がある」と聖書にあります。あらゆるものごとの「タイミング」を告げてくれる、それが「星」のカードなのかもしれません。とあれば「星」のカードが展開された時、私たちはその胸に「希望」を持ってもいいのかもしれません。そして身を清め、うまくいきますようにと、願いをこめて、おまじないをするといいのかもしれません。




投稿者:

イレーヌ・パープル

タロット・占星術研究&実占家