「恋愛」って何でしょうね?「恋」と「愛」をあわせると「恋愛」になる。では「恋愛」は「恋と愛の間」にあるのでしょうか?なかなか漠然としていて定義の難しいところですが、愛しあうふたりのことを「恋人」と称するのは万国共通のようです。
カードにはアダムとイブらしき男女が描かれ、イブの背後には「誘惑者」である蛇が巻きついた果実の木があります。この果実はアダムとイブが「楽園追放」となる原因となった「禁断の果実」ということでしょう。一方、アダムの背後にも樹木があります。何の木なのかわかりませんが、禁断の果実を食べたことで、彼等はお互いが裸であることを恥じるようになり、大事なところにいちじくの葉をつけるようになったと言われています。なんとなく葉のカタチがその「いちじくの葉」をイメージさせます…。なんて、イメージを膨らませていたのですが、ウエイト本人の記述によれば、アダムの背後に在るのは、12の実をつけた「生命の木」だそうです。イブの背後の木は「智恵の木」と呼ばれています。
アダムとイブの背後には、大きく描かれた天使が、神妙な面持ちで両手をひろげて空をおおっています。両手を広げてかかげるポーズは「オランス」といってキリスト教では神を祝福する一般的なポーズです。欧州の古典的宗教画などによく見られます。
個人的なイメージですが、恋人のカードの絵を見るとミルトンの「失楽園」(PARADAISE LOST,1667,Jhon Milton)を思い起こします。翻訳でしか読んだことはありませんが、この文学は娯楽として読むには少々ツラい文章で書かれています。それでも強く印象に残るのが天使ラファエルとアダムの会話のシーンです。ラファエルがアダムのところにやってきて、一緒に食事をしながら、アダムとイブのいる世界と、神や天使が住む天上界がどのようになっているかを語るのですが、ラファエルは、アダムに向かって再三「神に従順であればお前たちは幸福である」と告げます。ちょっとしつこいくらいに「神への従順」を説きます。
「神への従順」とは「秩序を乱さず、約束を守る」ということと同義と言えるかもしれません。つまりそれは「恋人」のカードの前に位置する5番目のカード「法王」が象徴していたものと同じです。しかし、イブは神のいいつけを破り「禁断の果実」を食べ、アダムもイブにすすめられて食べてしまいます。「恋人」のカードの絵では、まだアダムもイブもイチジクの葉を身につけてはいません。罪はこれから冒されるのでしょう。空にそびえる天使は、ラファエルが「神に従順であればお前たちは幸福である」と告げているかのようです。少し厳しい面持ちで…。
蛇に描かれているサタンが象徴するものは、「嫉妬」「嘘」「傲慢」「妄想」「復讐」…といったところでしょうか。サタンは眠るイブの耳もとにうずくまり、自分に都合の良い、妄想や幻想をふきこもうとしていたところを天使に槍で突かれました。サタンがイブにふきこもうとしていたのは「失楽園」から引用させてもらうと「傲慢をやがて生み出す自惚れに脹れあがった、錯乱した不平に満ちた想念や、空しい希望や、空しい期待や、不羈奔放(ふきほんぽう)な欲望」だそうです。やれ、恐ろしい。
天使と悪魔、「恋人」のカードには、天使の推奨する「神の道」とサタンの象徴する「罪の道」の両方が一枚の絵に描かれていることになります。マルセイユ版の絵柄には、若い男性とふたりの女性が描かれていて、「恋人」のカードは「迷い」を象徴するカードであるとも言われています。絵柄は違いますが、ライダー版のカードもまた「迷い」を表していると解釈できるのではないでしょうか。
「恋人」のカードが語る世界、それは「情熱」を持って「夢中」で行動している状態。それが「恋」であっても、例えば「仕事」であっても「神の道」と「罪の道」の両方が可能性の口を開けているような状態。「夢中」になるのは一種の「快感」でもありましょう。夢の中と書いて「夢中」と読みます。サタンが夢に忍び込もうとするものならば、夢を見過ぎるとサタンの策略に堕ちるかもしれません。
恋は「想像力」のなせる技(個人的な持論ですが)です。明るくポジティブな人間は、脳の前頭葉が活発に活動します。恋をしている状態、夢中になっている状態、その時に無上の幸福感をもたらしてくれるのは、前頭葉の「想像力」です。未来に向ける想像力、相手や物事に期待する想像力、自分自身の可能性にかける想像力です。よって「恋人」のカードは「クリエイティブ=創造力」というコンセプトも持ち合わせることになると考えられます。派生して「クリエイション」は「神の創造物」つまり人間を含めた生き物を意味します。広義の意味での「創造力」「芸術性」という意味が「恋人」のカードには含まれていると考えても良いのではないでしょうか。
私達は、アダムとイブの末裔であり、すでにこの世に「嫉妬のない恋愛」はなく、「嘘のない関係」は希有になってしまっています。だからこそ、どんな時も「心の健全性」を失わないよう気を付けなくてはなりません。「恋人」のカードからは、そんなメッセージも聞こえくるような気がします。
