なんとも緊張感あふれる絵図が特徴の「皇帝」のカードです。先の「女帝」のカードが「春」ならば、皇帝は厳しい「冬」を象徴しているようです。明らかに堅い石で作られた椅子には山羊の彫刻がなされています。山羊座は冬至にはじまり、四大(エレメント)は「地」にあたります。その守護惑星である土星は「大地の豊穣」を司ります。この点において「女帝」も「皇帝」も同様に「大地の豊穣」を象徴していますが、「女帝」にはない「厳しさ」をたたえているのが「皇帝」だといえるでしょう。「皇帝」のカードには、山羊座の機能である「威厳」と「名誉」が象徴されています。
「女帝」の場合は春のエネルギー作用で、放っておいても草木は伸び放題でしたが、「皇帝」の場合は冬ですから、草木は枯れ、収穫は見込めなくなります。絵を見ても背後には岩山しかありません。豊かなイメージはそこにはありません。そこで同じ「大地の豊穣」といっても「皇帝」の場合は、「なんとかしなければ」ならないわけです。
「強い意志」を感じさせる人物像は、自我をしっかりと確立した成熟した人格を表しているようです。白い髭をたくわえた老人なのに、赤い服を纏って「やる気満々」な感じです。この人物は課題に打ち勝とうと意を決しているのでしょう。課題とは何でしょうか。それは冬という厳しい季節を乗り切るために行わなくてはならない「仕事」かもしれません。「皇帝」のカードが語るのは、「目的」を達成するための「粘り強さ」「慎重さ」確実に歩みを進める「計画性」、しかるのちに「成功」をおさめ「権力者」として君臨すること、そしてそれを「維持」していくことの大切さです。
「皇帝」は4番目にくるカードです。4という数字の持つ安定感は、面積を拡大しながら着実に積み上げて行く建築物をイメージさせます。西洋のイメージに寄り添うと、それは城を築き、領土を拡大する事につながります。「皇帝」は城と領土を「統治する者」です。すべてを管理しコントロールしていかなければなりません。それって結構大変です。なので皇帝のカードの人物はしかめっ面をして頑張っているわけなんですね。
この大変さというのは、管理職的な大変さです。ストレスもそうとうありそうです。計画を立て実行するにあたり、実動するのは彼の若い部下達なのです。しかし責任は皇帝にあります。皇帝自身も甲冑を身につけて、じっと成りゆきを見守っています。彼の部下には、彼の息子も含まれているのかもしれません。厳しい態度で成りゆきを見守る皇帝の「父性」が物語られます。皇帝は「父親的人物」を象徴してもいるのです。
イレーヌの記憶倉庫に「皇帝」のカードのイメージに重なる映画があるので、紹介しておきたいと思います。「冬のライオン」1968年イギリス映画。
あらすじはピーター・オトゥ-ル扮するイギリス国王ヘンリ-2世が、クリスマス・イブに後継者を決めるため、一族を召集するのですが、キャサリン・ヘプバーン演じる奥方も交じって、息子3人他それぞれの思惑が錯綜する王位継承争いを描いた歴史ドラマです。古い映画ですが、息子役に若かりしアンソニー・ホプキンスが出演していて、レクタ-博士のイメージしか持っていなかったイレーヌにとっては新鮮でした。この映画を見終った感想はひとこと「すごいな…」でした。興味ある方は是非ご覧になってみてください。
「父親」と「権力」のからまり具合が絶妙です。「王位継承争い」は、社会的に確固たる権力を確立した者は、その存在を脅かされる立場にも立たされるリスクを背負っている、ということを物語っています。権力を手にした者には常に緊張感が伴うのです。
「権力者」「上司」「父親」といった人物像。こういう存在は頼もしいものです。彼等には「強さ」があります。しかし強すぎてしまった場合の影響力には困らされてしまうことになります。「厳しすぎる教育」「横暴」「冷酷」といった側面が強調されてきます。これらが「皇帝」のカードのネガティブなイメージと言えるでしょう。「冬のライオン」には、そういった側面がよく描かれていたように思います。いずれにしても「皇帝」のカードは、先の「女帝」と対比して解釈すると、カードのイメージがわかりやすくとらえられると思います。
