隠者/THE HERMIT
タロットコラム
アンドレイ・タルコフスキー監督の映画『アンドレイ・ルブリョフ(1969年・ソ連)』は、1400年前後に実在したイコン画家アンドレイ・ルブリョフを主人公にした映画です。伝記的でありながら、非常に詩的な表現に満ちた映画でした。私は、主人公のルブリョフの姿に強く「隠者」のイメージを抱きます。彼は画家であり僧侶でありましたので、その衣装も隠者のような修道士のものでしたし、イメージを抱きやすかったのかもしれません。映画はほとんど全編モノクロで、タルコフスキー監督の作風をご存知の方には想像しやすいと思いますが、非常に静か〜にゆるやか〜にストーリーは進行していきます。ハリウッドの娯楽映画好きの私には、最後まで見るのがちょっと辛い映画ではありましたが、一部強い印象を受けたシーンがあります。

映画の中に、鐘楼の鐘を作る青年のエピソードがあります。その時に、主人公のルブリョフは「無言の行」というのをやっていて、誰とも口をきかない試練を自らに課していました。「無言の行」は、まさに「隠者」な感じでした。その「無言の行」を彼はある時やめます。青年が作った鐘が初めて鳴った時です。その時代の鐘作りというのは、とてつもない大変さで、鐘作りのシーンばかりは、NHKのドキュメンタリーでも見ている気分でしたが、出来上がった鐘が鳴らなかった日には、青年は打ち首になっていたかもしれず、けっこうハラハラするシーンでした。大きなプレッシャーによる緊張の糸が鐘の音とともに切れ、青年は倒れこんで泣いてしまいます。その青年を抱きかかえながら、ルブリョフは「無言の行」をやめることを決めました(たしかそうだったと思います…記憶がたより)。

だからどう、というわけではありませんが、私が思うことは「隠者はいずれ目を開ける」ということです。カードの「隠者」は目を閉じています。しかし、彼のランプには六芒星が輝いています。六芒星については「上にあるごとく、下にもあるべし」とヘルメス文書にあるといいます。それは、天界と地上界の融合、聖と俗のまじわり…といったことを象徴しているのでしょうか。目を開けると、そこに「真理」が輝いていて、それは自分の手にあるのです。ランプははじめから輝いていたのではないのかもしれません。たった今輝きだしたのかもしれません。「隠者」の姿は、今までずっと探していたものをやっと見つけた瞬間のように、私には見えます。そう、その瞬間をこそ、手に入れるべきなのだと「隠者」のカードは語っているように思えるのです。孤独な作業は、新たなる創造の始まりに繋がっていくことでしょう。

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